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「熱がないからインフルエンザ・コロナではない」は本当?

「熱がないので、インフルエンザやコロナではないと思います」

診察室で患者さんからよく聞く言葉です。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症には高熱のイメージがあります。熱がなければ違う病気だと思うのも、無理はありません。

ただ、インフルエンザも新型コロナも、熱が出ないことがあります。咳やのどの痛みがあるときに、体温だけで「感染していない」と判断することはできません。

高熱はよくある症状ですが、必ず出るわけではありません

インフルエンザでは、急な発熱、頭痛、筋肉痛、だるさなどがみられます。ただし、すべての患者さんに高熱が出るわけではありません。

米国の医療従事者を対象とした研究では、インフルエンザと診断された41人のうち、診断までに発熱があったのは21人でした。約半数は、少なくとも診断までに発熱を認めなかったことになります。

新型コロナについては、国内の研究があります。2022年のオミクロン株流行期に、札幌市で症状のある約15万8,000人を調べたところ、登録時に発熱が報告されたのは38.8%でした。

 ただし、この研究でいう「発熱」は38℃以上です。発熱なしとされた人には37℃台の方も含まれるため、「約6割は平熱だった」という意味ではありません。それでも、高熱がないことを理由に新型コロナを否定できないことは分かります。

発熱する人の割合は、調査した時期や対象者によって変わります。当院でも発熱がない方でインフルエンザや新型コロナウイルスの検査が陽性となるケースは少なくなく、陽性者のだいたい2~3割程度が受診までに発熱がありません。

なお、医師でも勘違いが多いのですが、インフルエンザや新型コロナウイルスの抗原迅速検査は発熱がなければできないものではありません。

年齢や免疫の状態によって、症状の出方は異なります

感染したときの症状は、ウイルスの種類だけでなく、年齢や免疫の状態などによっても異なります。

インフルエンザでは、高齢者などで発熱が目立たず、食欲が落ちたり、普段と様子が違ったりすることがあります。新型コロナでは、ワクチン接種歴や過去の感染歴が、発熱などの症状の出方に関係することも報告されています。ただし、「ワクチンを接種した人は熱が出ない」「熱がない人は免疫が強い」とは言い切れません。

また、診察や検査を受ける時点で、すべての症状がそろっているとは限りません。今は熱がなくても、その後に出ることがあります。体温だけでなく、症状がいつ始まり、どう変わってきたかを確認する必要があります。

熱がなくても、人にうつすことがあります

「熱がない」と「症状がない」は違います。熱がなくても、咳やのどの痛み、鼻水などがあれば、症状はあります。

人にうつす可能性も、発熱の有無だけでは判断できません。インフルエンザでは、発熱のない医療従事者から患者さんへの感染が疑われた事例が報告されています。新型コロナでは、症状が出る前や、症状が軽くなった後にも、感染性のあるウイルスを排出することがあります。

新しく咳やのどの痛みなどが出たときは、熱がないからと安心しきらず、マスクの着用や換気を心がけましょう。高齢者や免疫の働きが低下している方と会う予定があれば、体調が戻るまで延期するなどの配慮も大切です。

診察では、体温以外の情報も確認します

診察では、体温とともに次のようなことを確認します。

症状が始まった時期と経過

咳、のどの痛み、鼻水、だるさなどがいつ始まり、その後どう変わってきたかを確認します。

周囲の感染状況

家族や職場、学校などで感染した人がいるかを確認します。

呼吸や飲食の状態

息苦しさや強い体調不良がないか、水分や食事を普段どおり取れているかを確認します。

重症化しやすい条件

年齢、持病、妊娠、免疫を抑える治療など、重症化しやすい条件があるかを確認します。

インフルエンザと新型コロナは症状が重なるため、症状だけで確実に見分けることはできません。必要に応じて検査を行いますが、咳や鼻水がある方全員に、同じ検査が必要なわけではありません。周囲の流行状況や、検査結果によって治療・対応が変わるかも踏まえて判断します。

発熱がなくても、早めに相談していただきたいとき

高齢の方、持病のある方、妊娠中の方、免疫を抑える治療を受けている方などは、新しく咳やのどの痛みなどが出たら、熱がなくても早めに医療機関へ相談してください。[4][8]

体温にかかわらず緊急の対応が必要な症状

強い息苦しさ、持続する胸の痛み、意識がはっきりしないといった症状がある場合は、体温にかかわらず緊急の対応が必要です。通常の外来受診を待たず、救急要請を含めて対応してください。

体温を測ることは、体調を知るうえで役立ちます。ただ、それだけで感染の有無や重症度が分かるわけではありません。

当院にご相談いただく際は、体温に加えて、「いつから、どのような症状があるか」「周囲に感染した人がいるか」もお伝えください。発熱がある方も、ない方も、症状と経過を確認し、必要な検査や治療を考えていきます。

参考文献・資料

本文中の番号に対応しています。外部資料は新しいタブで開きます。

  1. CDC. Clinical Signs and Symptoms of Influenza.
  2. Ridgway JP, et al. Influenza Among Afebrile and Vaccinated Healthcare Workers. Clinical Infectious Diseases. 2015;60:1591–1595.
  3. Nakakubo S, et al. Associations of COVID-19 symptoms with omicron subvariants BA.2 and BA.5, host status, and clinical outcomes in Japan: a registry-based observational study. Lancet Infectious Diseases. 2023;23:1244–1256. 発熱の定義は補足資料を参照。
  4. CDC. Symptoms of COVID-19.
  5. 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について.
  6. CDC. Diagnosis for Flu.
  7. Smith-Jeffcoat SE, et al. SARS-CoV-2 Viral Shedding and Rapid Antigen Test Performance — Respiratory Virus Transmission Network, November 2022–May 2023. MMWR. 2024;73:365–371.
  8. CDC. Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians.

医療情報について:本記事は、一般的な医学・健康情報の提供を目的としています。症状の程度、年齢、持病、妊娠、治療内容などによって、必要な検査や治療は異なります。体調について不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

※2026年10月6日時点の情報に基づき作成しています。

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