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今年のインフルエンザはなぜ早い?冬にワクチン2回目を打った方がいい?

「もう流行しているなら、ワクチンも早く打った方がよいのでしょうか」

「早めに打つと、冬には効果がなくなってしまいませんか」

「冬にもう一度打った方が安心でしょうか」

 今年はインフルエンザ流行が異例の早さのため、患者さんからよくこのような質問を受けます。今回はこの質問について解説します。

今年のインフルエンザは、なぜこんなに早い?

 2026年は、8月17〜23日の週に、全国の患者報告が流行開始の目安を超えました。冬を待たず、夏のうちに全国的な流行入りとなったことになります[1]。また、8〜9月に国内で調べられたウイルスでは、A型のうち「H1N1」という種類が中心になっています(2009年の新型インフルエンザの系統の株です)。[2]

 報道では様々な要因が伝えられていますが、現時点で流行が早まった確定的な原因は分かっていません。現在は、次のような要因が重なった可能性が考えられています。[3]

ウイルスの変化と、私たちが持っている免疫

 インフルエンザウイルスは、少しずつ変化しています。そのため、以前に感染したり、ワクチンを接種したりしていても、現在のウイルスに対する防御が十分とは限りません。

 最近のH1N1の一部では、以前のワクチン接種でできた抗体の反応が弱くなることが報告されています。こうした変化が、流行を後押しした可能性があります。ただし、「以前の免疫がすべてなくなった」「今季のワクチンが無効になった」という意味ではありません。[3]

夏の流行と、旅行や帰省などによる人の移動

 今年は、香港や台湾などの近隣地域でもH1N1の流行が確認され、沖縄でも夏にH1N1が検出されています。こうした地域で起きていた感染が、国内外の旅行や帰省などを通じて広がった可能性があります。ただし、特定の国から特定の経路で日本全国へ広がったとまで分かっているわけではありません。[3]

屋内での接触や、学校再開後の広がり

 暑さを避けて屋内に集まることや、学校再開による接触の増加も、感染を広げる要因として考えられます。ただし、9月の学校再開だけでは、8月の流行入りは説明できません。学校再開は、その後の流行を加速させた可能性として考える必要があります。[3]

 そもそも、インフルエンザは「寒くなければ流行しない病気」ではありません。温帯では冬の流行が中心ですが、熱帯では年間を通じて発生します。一方で、「猛暑でウイルスが強くなった」「温暖化だけが原因」と断定する根拠もありません。[3][4]

ウイルスの変化、免疫、人の移動、生活環境が組み合わさった可能性があります。「これが唯一の原因」と言い切れる段階ではありません。

早めにワクチンを打った方がよいのは、どのような人でしょうか

 接種時期を考えるときは、「冬まで効果を保ちたい」という点だけでなく、接種を待っている間に感染する危険も考える必要があります。

 ワクチンは、接種したその日から十分な防御が得られるものではありません。体が抗体を作り、防御を整えるまでには、一般に約2週間かかります。周囲で流行が広がってから慌てて接種しても、すぐには間に合わないことがあります。[5]

高齢者や、持病のある方

65歳以上の方、糖尿病や心臓・肺・腎臓などの病気がある方、免疫を抑える治療を受けている方などは、感染したときに重症化しやすいため、早めに接種時期を相談しましょう。[4][6]

妊娠中の方や、小さな子ども

妊娠中の方や小さな子どもにとっても、インフルエンザへの備えは重要です。年齢や健康状態によって使えるワクチンや必要な接種回数が異なるため、医療機関で確認してください。[4][7]

医療・介護の仕事や、ご家族のケアをする方

感染する機会が多い方や、重症化しやすい方と同居しているご家族も、自分自身の接種を確認しましょう。ただし、ワクチンだけで感染や家庭への持ち込みを完全に防げるわけではありません。[4][7]

受験など、大切な予定を控えた方

試験当日だけでなく、学校や塾で過ごす準備期間も含めて予定を立てましょう。防御が整うまで約2週間かかるため、試験直前の接種では十分に備えられない可能性があります。[5]

糖尿病は、血糖値が安定していても注意が必要です

 糖尿病は、血糖値がよく管理されていても、インフルエンザの合併症に注意が必要な病気です。「血糖値が安定しているから、感染対策は特に必要ない」とは考えない方がよいでしょう。[6]

「毎年と同じ月」ではなく、今年の流行を見て判断します

 重症化しやすい方の周囲ですでに流行が始まっている場合には、「毎年11月に打っているから、今年もそこまで待とう」と決めつけず、今シーズンのワクチンが接種可能になった段階で相談することを勧めます。

 日本ワクチン学会も、今年の早い流行を踏まえ、地域の流行状況に応じた柔軟な接種体制が重要だとしています。接種開始日や費用の助成期間は、医療機関や自治体に確認してください。[7]

「全員が、できるだけ早い日に打てばよい」というわけではありません。地域の流行、ご自身の重症化リスク、感染する機会、試験などの予定を踏まえて接種時期を決めましょう。

早めに打った人は、冬にもう一度打った方がよいのでしょうか

 今シーズンの必要な接種回数を終えた方に、早く接種したという理由だけで、冬の追加接種を一律に勧めるわけではありません[8]。

「5か月で効果が切れる」というわけではありません

 ワクチンの防御効果は、時間とともに低下することがあります。ただし、その速さや程度は、年齢や流行するウイルスなどによって異なります。「5か月までは効いて、翌日から無効になる」という仕組みではありません。複数のシーズンを調べた研究でも、効果の低下は認められましたが、どのウイルスに対しても同じ時期に効果がなくなったわけではありません。[9]

数か月あけた2回目接種の効果を示した研究はあるが、結論はまだ出ていません

 シンガポールでは、65歳以上の200人を対象に、最初の接種から6か月後にもう一度接種する研究が行われました。一部のウイルスに対する抗体が増え、インフルエンザのような症状が出る人も少なくなりました[10]。

 一方で、約4か月後に追加した別の研究では、抗体による防御の指標に明確な上乗せが認められず、結果は一様ではありません。[11]

 現状は「広く勧められるほど、追加接種の利益が確かになっていない」という段階です。

高齢者や糖尿病のある方でも、自動的に2回にはしません

 「重症化しやすいから、できることはすべてしておきたい」という希望は大切です。しかし、重症化しやすいことと、2回目の効果が証明されていることは同じではありません。

 高齢者や糖尿病のある方でも、まずは標準的な接種を受けることが基本です。日本では、注射のインフルエンザワクチンは、13歳以上では原則として1回接種とされています。[7]

 一方で、初回接種から長期間が過ぎても流行が続き、複数の持病がある、感染する機会を避けにくいといった場合には、主治医と対策を再評価する余地があります。追加接種を個別に検討する場合も、通常の推奨ではなく、利益が未確定な選択肢であることを理解する必要があります。

受験生の「念のための2回目」も、通常は勧めません

 基礎疾患のない13歳以上の受験生についても、受験があるという理由だけで、今シーズンの接種を終えた後にもう一度追加することは、通常は勧めません。先ほどの6か月後の研究も、健康な受験生を対象としたものではありません。

 「試験期間にかかりたくない」という目標に対しては、接種回数を増やすことだけに頼らず、学校や塾、家庭での感染対策と、家族や本人に症状が出た場合の対応を準備しましょう。その上でやはり接種したいという場合は医師にご相談ください。

子どもの通常の2回接種とは、区別してください

ここまでの説明は、子どもに必要な通常の2回接種を否定するものではありません。日本では、生後6か月以上13歳未満の子どもが注射のワクチンを受ける場合、通常は2〜4週間あけて2回接種します。この2回目は、最初から予定されている接種の一部です。[7]

まとめ

  • 今年の早い流行は、複数の要因が重なった可能性があります。原因は確定していません。
  • 重症化しやすい方や、感染する機会が多い方は、早めに接種時期を相談しましょう。
  • 早く打ったという理由だけで、冬の2回目を一律に勧めることはしません。2回接種を打ちたいという場合は医師にご相談ください。

参考文献・公的資料

本文中の番号に対応しています。外部資料は新しいタブで開きます。

  1. 厚生労働省「インフルエンザの発生状況」2026年第34週(PDF)2026年8月の全国流行入りと、基本的な予防対策。
  2. 国立健康危機管理研究機構「インフルエンザ」2026年第37週 疫学情報(PDF)国内の患者報告とウイルスの検出状況。
  3. 新潟大学国際保健学分野「2026年9月、早くもインフルエンザが流行」近隣地域の流行、ウイルスの変化、人の移動などについての解説。
  4. WHO「季節性インフルエンザ」(英語)流行の季節性、重症化リスク、予防について。
  5. CDC「インフルエンザワクチンの種類」(英語)接種から抗体ができるまでの期間など。
  6. CDC「インフルエンザと糖尿病」(英語)血糖管理が良好な場合も含めた、糖尿病患者の合併症リスク。
  7. 日本ワクチン学会「2026-27期の季節性インフルエンザワクチンの接種に関する見解」(PDF)国内の接種回数、年齢別の接種方法、今年の接種体制について。
  8. CDC「季節性インフルエンザワクチン使用に関する臨床上の考慮事項」(英語)同一シーズンの接種を完了した人への追加接種は推奨しないことを記載。
  9. Ferdinandsら。接種後の防御効果の低下を調べた研究。2017年(PubMed)Clin Infect Dis. 2017;64:544–550。接種後の期間とワクチンの有効性を解析。
  10. Youngら。高齢者の6か月後追加接種を調べたランダム化試験。2019年(PubMed)Clin Infect Dis. 2019;69:121–129。TROPICS1試験。65歳以上200人が対象。
  11. McElhaneyら。16週後の追加接種と免疫応答を比較した研究。2005年(PubMed)Vaccine. 2005;23:3294–3300。短期間の2回接種とは異なる間隔での研究。

医療情報について:本記事は、一般的な医学・健康情報の提供を目的としています。適切な接種時期、ワクチンの種類、治療は、年齢、持病、治療内容などによって異なります。接種や体調について不安がある場合は、医療機関にご相談ください。流行状況や推奨は今後変わる可能性があります。

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