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ワクチンで予防できる海外渡航時に注意すべき感染症

1. 各地域でワクチン接種や予防薬が必要となりやすい疾患

2. 各感染症のワクチン接種が推奨される方・渡航地域と各種リスク

A型肝炎:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
南・東南アジア、アフリカ、中南米などの流行地域へ渡航する、免疫のない方。短期旅行や通常のホテル滞在でも感染し得るため、長期滞在者に限らず推奨される。
感染経路:
便に汚染された水・食品・手指などを介した経口感染。
潜伏期間:
15~50日(平均約28日)。
症状:
発熱、倦怠感、食欲不振、吐き気、腹部不快感、黄疸など。小児では無症状のことも多い。
重症化:
まれに劇症肝炎・急性肝不全を起こす。高齢者や慢性肝疾患のある方では重症化しやすい。慢性化はしない。

B型肝炎:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
特に感染率の高い地域への長期滞在者、医療従事者、性行為や医療処置などで血液・体液に接触する可能性がある方で重要。
感染経路:
血液・体液を介して感染。性行為、針刺し、不衛生な医療器具・注射・入れ墨などが主なリスク。
潜伏期間:
症状出現まで通常60~150日(平均約90日)。
症状:
無症状のことも多い。倦怠感、食欲不振、吐き気、腹痛、黄疸など。
重症化:
急性肝不全を起こすことがある。一部は慢性化し、肝硬変や肝がんへ進行する。乳幼児期の感染は特に慢性化しやすい。

破傷風:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
未接種・接種歴不明・基礎接種が不十分な方に推奨。基礎接種済みでも最終接種から10年以上経過している場合は追加接種を検討する。野外活動やけがのリスクが高い方では特に重要。
感染経路:
土壌やほこりなどに存在する破傷風菌の芽胞が、刺し傷・切り傷・やけどなどの創部から侵入して感染する。
潜伏期間:
通常3~21日。
症状:
口が開きにくい、首や全身の筋肉のこわばり、飲み込みにくさ、痛みを伴う筋けいれんなど。
重症化:
重症度が非常に高く、全身性けいれん、呼吸筋麻痺、自律神経障害などを起こし、集中治療が必要となることがある。死亡する場合もある。

狂犬病:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
アジア・アフリカを中心とする流行地域への渡航者で検討する。特に動物と接触する可能性が高い方、長期・反復滞在者、咬傷後に適切な医療を速やかに受けにくい地域へ渡航する方で重要。
感染経路:
感染したイヌ、ネコ、サル、コウモリなど哺乳類による咬傷・引っかき傷、唾液が傷口や粘膜に付着することで感染する。
潜伏期間:
通常2~3か月。1週間程度から1年以上まで幅がある。
症状:
発熱、倦怠感、咬傷部位の痛み・しびれなどに続き、興奮、恐水症、嚥下困難、麻痺、意識障害などが出現する。
重症化:
発症するとほぼ100%死亡する。曝露後は症状を待たず、創部洗浄と曝露後ワクチンなどの適切な処置を速やかに行う必要がある。

腸チフス:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
南アジア、特にインド、パキスタン、バングラデシュなどへの渡航者で強く検討される。東南アジア、アフリカ、中南米などの流行地域も対象。現地家庭への滞在や衛生環境の悪い地域、屋台等で飲食する方では特に重要。
感染経路:
感染者・保菌者の便などで汚染された水や食品を介した経口感染。
潜伏期間:
通常6~30日。
症状:
持続する高熱、頭痛、倦怠感、腹痛、食欲不振、下痢または便秘など。
重症化:
食あたりの中では重症度が高く、腸出血、腸穿孔、脳症、敗血症などを起こすことがあり、適切な治療が遅れると死亡する場合がある。

ポリオ:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
野生株またはワクチン由来ポリオウイルスが流行している国・地域(アジア・アフリカなど)への渡航では、接種済み成人でも追加接種を検討する。
感染経路:
主に便に汚染された水・食品・手指などを介した糞口感染。
潜伏期間:
軽症症状は通常3~6日後、麻痺は通常7~21日後に出現する。
症状:
多くは無症状。症状が出る場合は発熱、咽頭痛、倦怠感、頭痛、吐き気など。
重症化:
一部で髄膜炎や急性弛緩性麻痺を起こし、麻痺が後遺症として残ることがある。呼吸筋が麻痺すると死亡する場合がある。

日本脳炎:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
東・南・東南アジア、西太平洋地域などの流行地域へ1か月以上滞在する方や、頻回に渡航する方に推奨。短期でも農村部での屋外・夜間活動、キャンプ、ハイキングなど蚊に刺される機会が多い場合は検討する。
感染経路:
日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることで感染する。通常、人から人へは感染しない。
潜伏期間:
通常5~15日。
症状:
大部分は無症状。脳炎を発症すると、発熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれん、神経症状などが出現する。
重症化:
脳炎発症者の約20~30%が死亡し、生存者の約30~50%に神経学的・認知機能障害などの後遺症が残る。

コレラ:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
アフリカ、南アジアなどでコレラが実際に流行している地域への渡航者で検討する。特に災害・人道支援活動に従事する方、安全な飲料水や衛生環境を確保しにくい地域へ行く方で重要。一般的な観光旅行者に一律に推奨されるものではない。
感染経路:
コレラ菌に汚染された水・食品を介した経口感染。加熱不十分な魚介類なども感染源となる。
潜伏期間:
12時間~5日。
症状:
多くは無症状または軽症。重症例では大量の水様性下痢、嘔吐、急速な脱水がみられる。
重症化:
重度脱水、電解質異常、循環不全・ショックを起こし、治療しなければ数時間で死亡することがある。適切な補液治療により予後は大きく改善する。

マラリア:

予防内服が推奨・検討される方/主な渡航地域:
サハラ以南アフリカ、南・東南アジア、中南米、南太平洋などの流行地域が対象。
感染経路:
マラリア原虫を保有するハマダラカに刺されることで感染する。
潜伏期間:
通常7~30日だが、原虫の種類によっては感染から数か月以上経過して発症することもある。
症状:
発熱、悪寒、発汗、頭痛、筋肉痛、倦怠感、吐き気など。初期症状は非特異的なことが多い。
重症化:
特に熱帯熱マラリアは短時間で重症化し、意識障害、けいれん、重症貧血、腎不全、呼吸不全、ショックなどを起こして死亡することがある。妊婦、乳幼児、免疫のない渡航者では特に注意が必要。

麻疹:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
世界中への渡航者で、麻疹に対する免疫が十分でない方。原則として年齢に応じた2回のワクチン接種歴などを確認し、不足していれば渡航前接種を検討する。
感染経路:
主に空気感染。飛沫感染や感染者の鼻・咽頭分泌物との接触でも感染する。感染力は極めて強い。
潜伏期間:
初期症状まで通常約11~12日。発疹は感染から約14日後に出現することが多い。
症状:
高熱、咳、鼻汁、結膜充血などに続き、全身に発疹が出現する。口腔内にコプリック斑を認めることもある。
重症化:
肺炎、中耳炎、脳炎などを合併し、死亡することもある。まれに感染から数年後に亜急性硬化性全脳炎を発症する。

髄膜炎菌感染症:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
サハラ以南アフリカの髄膜炎ベルト、特に乾季への渡航者や流行地域への渡航者で推奨・検討する。サウジアラビアへのハッジ・ウムラ巡礼では接種証明が求められる。欧米での学生寮などで集団生活をする留学生でも渡航先の推奨に応じて検討する。
感染経路:
感染者・保菌者の唾液や呼吸器分泌物を介した飛沫感染。キスや共同生活など、濃厚・長時間の接触で感染しやすい。
潜伏期間:
通常2~10日。
症状:
突然の高熱、激しい頭痛、項部硬直、吐き気・嘔吐など。敗血症型では紫斑、意識障害、急速な全身状態悪化を認めることがある。
重症化:
髄膜炎や敗血症が急速に進行し、適切な治療を行っても死亡することがある。生存者に難聴、神経障害、四肢切断などの後遺症が残る場合がある。

ダニ媒介脳炎:

接種が推奨・検討される方/主な渡航地域:
中部・東部・北部ヨーロッパからロシア、中国北部などの流行地域で、森林・草地でのハイキング、キャンプ、農林業などマダニに接触する機会が多い方。特に春~秋の野外活動で検討する。都市部のみの短期観光では通常リスクは低い。
感染経路:
ウイルスを保有するマダニに刺されることで感染する。まれに、未殺菌の乳や乳製品を介して感染する。
潜伏期間:
通常7~14日。おおむね2~28日の範囲。
症状:
多くは無症状。発症すると発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などがみられ、一部では一旦改善した後に髄膜炎、脳炎、脊髄炎などを発症する。
重症化:
重症例では麻痺、認知機能障害、その他の神経学的後遺症が残ることがあり、死亡する場合もある。高齢者では重症化しやすい。

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